デザインは機能であるとデザイナー・鈴木清巳は言う。彼女はさらに付け足した。
美しいことも一つの機能なのではないかと。

美大を卒業後、鈴木は単身フランスへ向かった。憧れのデザイン事務所の門戸を叩き、初めは研修生から、その後晴れて正式スタッフとして4年間仕事をした。

フランスでの経験はすべてにおいて貴重なものだった。日常の中にあるカフェの光景、歳を重ねても凛とした佇まいの貴婦人、美意識の高い人々に揉まれながら、日本人としてのアイデンティティを探した。

そんな鈴木が目をつけたのは、カーボンファイバーという素材。
きっかけは雑誌の記事だった。そして、その思いを強めた理由は、「日本人は細かい作業は得意だが、それ以外は大したことがない」と見下されていたことに対する反骨心からだ。
「日本発の素材で何かをやってやる。」
カーボンファイバーは、鈴木にとって打ってつけの素材だったのだ。

そんな中、一時帰国した際に現在籍を置く株式会社イシマルの代表取締役と出会った。そして、「1年後日本に帰国するので貴社に就職させてください。」という一見唐突なオファーを通した。
1年後、帰国した鈴木は早速、100%カーボンファイバーを使ったインテリア作りに取り組んだ。次々に作品を発表し、今年5月には個展を開くまでになった。

子どもの頃、料理人だった父親に連れられてよく外食をした。その経験の中で、料理の美味しさとは別に、空間によって自分の気分やお客の雰囲気が変わることに気づいたことが、デザイナーになるきっかけだった。そんな鈴木の夢は、自分の仕事を通じて人々に非日常を味わってもらうこと。
学生時代に訪れた欧州で、ある大聖堂の扉を開ける前と開けた後ではまったく空気が変わったのを感じた。街の喧騒からタイムスリップしたかのように人々が祈りを捧げている光景を目にし、そのあまりの美しさに「空間」や「建築」というものの凄みを改めて感じたのだ。
「私も人をこんな気分にさせるものを作りたい。」そう思った少女は、今もまだ夢の途中。

五感に訴えかけるもの作りを心掛ける鈴木が一番大切にしていることは、現場の職人と同じ目線で仕事をすること。
これからの活動が楽しみなデザイナーの一人だ。

(鈴木清巳の作品)
カーボンファイバー製960gの超軽量椅子Zephyr。 カーボンファイバー製960gの超軽量椅子Zephyr。

カーボンファイバーとLED照明が一体となったテーブルKhlôris。 カーボンファイバーとLED照明が一体となったテーブルKhlôris。

カーボファイバーのフレームにレザーを施したソファーHora。 カーボファイバーのフレームにレザーを施したソファーHora。

銀座資生堂ビルのエントランスを飾る受付カウンターVenus。 銀座資生堂ビルのエントランスを飾る受付カウンターVenus。